1Password(ワンパスワード)TIPS
【企業向けパスワード管理アプリ比較】1Password vs Google
「セキュリティー対策は必要だとわかっているけれど、社内のパスワード管理はまだ各自に任せている…」「従業員が同じパスワードを使い回していることが気になる…」「部門や事業部単位でアカウント情報を安全に共有する方法はないだろうか?」
このような悩みをお持ちの企業のIT/セキュリティー担当者の方は少なくないでしょう。デジタル化が進み、企業が管理すべきアカウントやパスワードは年々増加しています。しかし、多くの企業ではまだ体系的なパスワード管理が導入されておらず、セキュリティーリスクを抱えたままになっています。
本記事では、企業向けパスワード管理アプリとして「Googleパスワードマネージャー」と「1Password(ワンパスワード)Business」を比較し、それぞれの特徴や導入メリットをご紹介します。パスワード管理の課題を解決し、セキュリティー強化につながる選択肢をご検討ください。
はじめに:企業パスワード管理の重要性と課題

企業におけるパスワード管理は、単なる管理業務ではなく重要なセキュリティー対策の1つです。しかし、多くの企業では効果的な仕組みが整っておらず、脆弱な状態に置かれています。まずは自社のパスワード管理の現状とその課題について考えてみましょう。
自社のパスワード管理の実態を認識しよう
貴社ではパスワード管理はどのように行われていますか? 以下のような状況に心当たりはありませんか?
- 従業員が個人的な記憶やメモに頼っている
- 複数のシステムで同じパスワードを使い回している
- エクセルやテキストファイルでパスワードリストを管理している
- 部署内でパスワードをメールやチャットで共有している
- パスワードの定期変更ルールはあるが、実際には守られていない
多くの企業では、パスワード管理の重要性は認識していながらも、適切な仕組みやツールの導入が進んでいません。この状況は「分かっているけれどできていない」というセキュリティーギャップを生み出しています。
管理不十分だとどんなリスクが?
パスワード管理が不十分だと、以下のようなセキュリティーリスクが発生します。
- 不正アクセスの危険性増大:弱いパスワードや使い回しによって、1つのサービスが漏洩すると連鎖的に他のアカウントも危険にさらされます。
- 情報漏洩の拡大:共有アカウントの管理が不適切だと、退職者が退職後も企業のシステムにアクセスできる状態が続いてしまうことがあります。
- 業務効率の低下:パスワードを忘れてリセット作業が頻発したり、システム管理者への問い合わせが増加したりすることで、業務効率が低下します。
- コンプライアンス違反のリスク:多くの業界規制やプライバシー法では、適切なアクセス管理が求められており、不適切な管理は法令違反につながる可能性があります。
- 監査対応の難しさ:誰がいつどのシステムにアクセスしたのか記録がないと、セキュリティーインシデント発生時の調査が困難になります。
実際にサイバー攻撃の多くはパスワード関連の脆弱性を突いたものであり、企業のセキュリティー対策として、パスワード管理の改善は優先度の高い課題となっています。
アプリ導入で何が変わる?
パスワード管理アプリを導入することで、次のような変化が期待できます。
- セキュリティーレベルの向上
- 強力で一意のパスワードを各サービスに設定可能に
- 2要素認証の一元管理
- パスワード漏洩のリスク検知と警告
- 業務効率の改善
- ログイン作業の自動化による時間節約
- パスワードリセット作業の減少
- システム管理者の負担軽減
- チーム連携の強化
- 安全なパスワード共有機能
- 部門・事業部単位でのアクセス権管理
- 退職者のアクセス権迅速な削除
- コンプライアンス対応の簡素化
- アクセスログの記録と監査証跡の保持
- セキュリティーポリシーの一元管理と適用
- 定期的なパスワード変更の促進と管理
パスワード管理アプリの導入は、単にパスワードを記録するだけでなく、企業全体のセキュリティー文化を向上させる第一歩となります。特に中堅・大企業では、従業員数が多いほど効果は大きくなります。
Googleパスワードマネージャーとは?

多くの企業が既に利用しているGoogleサービスと連携できる無料のパスワード管理ツールとして、Googleパスワードマネージャーがあります。特にGoogle Workspaceを活用している企業では、追加コストなしで利用できる選択肢として検討する価値があるでしょう。
※機能・プラン・料金は、変動する場合があります。
どんなツール?
Googleパスワードマネージャーは、Googleが提供する無料のパスワード管理ツールです。Google ChromeやAndroidのシステムに組み込まれており、ユーザーのウェブサイトログイン情報を安全に保存し、必要に応じて自動入力する機能を提供します。
主な特徴
- 完全無料:追加費用なしでGoogleアカウント保有者なら誰でも利用可能
- クロスプラットフォーム:ChromeブラウザーやAndroidデバイスで利用可能
- 自動入力機能:保存されたログイン情報を自動的に入力
- パスワード生成:セキュアなパスワードの自動生成機能
- 漏洩チェック:データ漏洩があった場合に警告を表示
企業のIT担当者としては、既にGoogle WorkspaceやChromeブラウザーを社内標準として採用している場合、従業員に追加のアプリをインストールさせることなく、基本的なパスワード管理機能を提供できるメリットがあります。
Googleアカウントとの連携は?
Googleパスワードマネージャーの最大の特徴は、Googleアカウントとの緊密な連携です。これにより以下のようなメリットがあります。
- シームレスな利用体験
- Googleアカウントでログインするだけで利用開始可能
- 設定の追加や複雑な初期セットアップが不要
- ChromeブラウザーやAndroidデバイスですぐに利用可能
- 自動同期
- 複数のデバイス間でパスワードが自動的に同期
- 新しいデバイスでもGoogleアカウントでログインするだけで利用可能
- クラウドバックアップによるデータ保護
- セキュリティー強化
- Googleアカウントの2要素認証を活用
- パスワードマネージャーのデータ保護にGoogleのセキュリティー基盤を活用
- Googleアカウント保護プログラムとの連携(対応アカウントの場合)
ただし、企業ユースにおいては、このGoogleアカウントとの強い紐付けが制約になる場合もあります。例えば、Google Workspace以外のプラットフォームを主に利用している企業や、Googleアカウント以外の認証システムを採用している企業では、導入の障壁となることがあります。
どんな基本機能がある?
Googleパスワードマネージャーの基本機能を見ていきましょう。
- パスワードの保存と自動入力
- ウェブサイトへのログイン情報を自動的に記録
- サイト訪問時に保存されたユーザー名とパスワードを自動入力
- フォーム入力の手間を省き、正確なパスワード入力をサポート
- パスワード生成
- 強力なランダムパスワードを自動生成
- サイトごとに異なる安全なパスワードを簡単に設定
- パスワードの使い回しを防止
- 脆弱性チェック
- 保存されたパスワードの強度チェック
- 漏洩した可能性のあるパスワードの警告
- 使い回しパスワードの検出と警告
- クロスデバイス同期
- パソコン、スマートフォン、タブレット間でのデータ同期
- どのデバイスからでもパスワードにアクセス可能
- デバイス紛失時にもデータを失わない安心感
- パスワードエクスポート
- パスワードデータのバックアップ機能
- CSVファイルとしてエクスポート可能
- 他のパスワードマネージャーへの移行に対応
企業利用においては、これらの基本機能は個人ユーザーには十分かもしれませんが、企業のセキュリティーポリシーに合わせた詳細な設定やチーム共有機能などは限定的です。そのため、より高度な企業向け機能が必要な場合には、制約を感じる場合があります。
1Password(ワンパスワード)Businessとは?

「とりあえずGoogleが覚えといてくれるから」というだけでも、Googleパスワードマネージャーを利用する十分な理由になります。ですが、Googleにはないサービスを提供する企業向けの総合パスワード管理ソリューションも、企業のセキュティー戦略として知っておくといいでしょう。今回は、組織のセキュリティーニーズに特化した機能を提供する1Password Businessを紹介します。個人向けのパスワード管理の枠を超え、企業全体のセキュリティーポリシーを強化するためのツールです。
※機能・プラン・料金は、変動する場合があります。
ビジネス版の概要
1Password Businessは、企業や組織向けに設計された高度なパスワード管理プラットフォームです。セキュリティーとチームコラボレーションのバランスを取りながら、企業全体のパスワード管理を一元化する包括的なソリューションを提供します。
主な特徴
- チーム管理に最適化:部署や役割ごとにアクセス権を設定可能
- 高度な暗号化:AES-256ビット暗号化とゼロ知識アーキテクチャを採用
- 企業向け管理コンソール:管理者が全体のセキュリティーポリシーを設定・監視
- サードパーティー連携:Slack、Microsoft Teams、Oktaなどとの連携
- アクティビティーログと監査:セキュリティーレポートと詳細な監査ログ
1Password Businessは、従業員数10人以上の組織や、複数の部門・事業部を持つ企業、セキュリティーコンプライアンスへの対応が必要な企業に特に適しています。10ユーザーまでのTeams Starter Pack、Businessプラン、Enterpriseプランがあり、企業規模に応じたスケーラブルな料金体系を提供しています。
個人版とは何が違う?
1Password Businessは個人向けプランとは異なり、企業特有のニーズに対応するための機能が多数追加されています。以下のような違いがあります。
1. ユーザー管理とアクセス制御
- 個人版:単一ユーザーまたは家族向けの限定的な共有
- Business版:詳細なアクセス権管理、役割ベースのアクセス制御、グループ管理機能
2. 管理機能
- 個人版:基本的な自己管理ツールのみ
- Business版:中央管理コンソール、管理者権限、ポリシー設定、ユーザープロビジョニング
3. セキュリティー監査とコンプライアンス
- 個人版:基本的なセキュリティーチェック
- Business版:詳細な監査ログ、コンプライアンスレポート、アクティビティー履歴
4. 緊急アクセス
- 個人版:限定的な緊急アクセス設定
- Business版:管理者による緊急アクセス復旧、アカウントリカバリーポリシー
5. 統合とAPI連携
- 個人版:基本的なブラウザー・デバイス連携のみ
- Business版:SSO連携、IDプロバイダー統合、ビジネスツール連携、API
6. コスト構造
- 個人版:定額制(個人用月額2.99ドル、ファミリー用月額4.99ドル)
- Business版:ユーザーあたりの料金(月額7.99ドルから)
このように、1Password Businessは単なる個人向けツールの集合体ではなく、企業のセキュリティーガバナンスを強化するための総合的なプラットフォームとなっています。特に重要なのは、管理者がパスワードポリシーを一元管理し、組織全体のセキュリティー基準を維持できる点です。
主な機能を紹介
1Password Businessが提供する主要な機能は以下の通りです。
1. Vault(保管庫)システム
- プライベートVault:従業員個人の認証情報を保管
- 共有Vault:チーム/部門間で安全に情報共有
- 管理者Vault:重要な管理者資格情報の保管
2. 高度なセキュリティー機能
- Watchtower:パスワード漏洩の監視と警告
- 2要素認証:追加のセキュリティーレイヤー
- 生体認証:指紋や顔認証によるログイン
- エンドツーエンド暗号化:データは常に暗号化された状態
3. チームコラボレーション機能
- 安全な情報共有:パスワード、文書、ライセンスキーなど
- アクセス権限管理:「閲覧のみ」から「編集可能」まで詳細な権限設定
- 招待・オンボーディング:新メンバーの簡単な追加と初期設定
4. 管理・監視ツール
- 管理コンソール:ユーザー、グループ、Vaultの一元管理
- 使用状況レポート:セキュリティー状態の可視化
- 監査ログ:誰が何にいつアクセスしたかを記録
5. ビジネスインテグレーション
- SSO連携:Okta、Azure AD、Oneloginなどと連携
- プロビジョニング:SCIM、Active Directoryとの連携
- ビジネスツール連携:Slack、Microsoft Teamsなどと統合
6. モバイル・デスクトップ対応
- クロスプラットフォーム:Windows、Mac、iOS、Android対応
- オフラインアクセス:インターネット接続なしでも利用可能
- ブラウザー拡張:Chrome、Firefox、Safari、Edgeに対応
これらの機能により、1Password Businessは単なるパスワード保存ツールではなく、企業の包括的なセキュリティー基盤として機能します。特に、複数の部門や事業部を持つ企業では、それぞれのチームに適切なアクセス権を設定しながら、全体のセキュリティーポリシーを一元管理できる点が大きな魅力となっています。
徹底比較!1Password Business vs Googleパスワードマネージャー
ここまでで、Googleパスワードマネージャーと1Password Businessの基本的な特徴をご紹介しました。次に、企業のIT・セキュリティー担当者が選択する際に重要となる各観点から、両者を詳しく比較していきましょう。自社のニーズに最適なソリューションを選ぶための判断材料としてご活用ください。
セキュリティーを比較
パスワード管理ツールの最も重要な評価ポイントはセキュリティーです。両サービスのセキュリティー機能を比較してみましょう。
セキュリティー機能 | 1Password Business | Googleパスワードマネージャー |
暗号化方式 | AES-256ビット暗号化とゼロ知識アーキテクチャー | AES-256ビット暗号化 |
マスターパスワード | 独自のマスターパスワードとSecret Keyの組み合わせ | Googleアカウントのパスワードに依存 |
2要素認証 | 標準搭載(TOTP対応) | Googleアカウントの2FA設定に依存 |
データ保存場所 | 独自のセキュアサーバー | Googleのサーバー |
セキュリティー監査 | 定期的な第三者監査と脆弱性報告プログラム | Googleのセキュリティー基盤による保護 |
SOC2認証 | 取得済み | 取得済み(Google全体として) |
漏洩モニタリング | Watchtower機能による常時監視 | パスワードチェックアップ機能で基本的な監視 |
1Password Businessの強み
- ゼロ知識アーキテクチャーにより、1Passwordのスタッフでさえもユーザーデータにアクセスできない設計
- マスターパスワードとSecret Keyの二重保護(Secret Keyは端末にのみ保存)
- 包括的なWatchtower機能によるパスワード漏洩監視と脆弱性チェック
- ビジネス向けの詳細なセキュリティーポリシー設定
Googleパスワードマネージャーの制約
- Googleアカウントのセキュリティーに依存する構造
- 管理者向けの詳細なセキュリティーポリシー設定が限定的
- 企業向けの監査機能が充実していない
セキュリティーの観点では、1Password Businessはビジネス用途に最適化された多層的なセキュリティー対策を提供しており、企業のセキュリティー要件を満たす設計になっています。一方、Googleパスワードマネージャーは、基本的なセキュリティー機能は備えていますが、企業のセキュリティーガバナンスとしては機能が限定的です。
管理機能を比較
企業のIT担当者にとって、管理のしやすさと細かい設定が可能かどうかは重要な選択ポイントです。
管理機能 | 1Password Business | Googleパスワードマネージャー |
管理コンソール | 専用の管理者ダッシュボード | Google Workspace管理コンソール内の限定的な設定 |
ユーザー管理 | 詳細なユーザー権限設定、グループ管理 | 基本的なユーザー管理のみ |
アクセス権限 | 役割ベースのきめ細かい権限設定 | 限定的(基本的に全て・なしの二択) |
ポリシー設定 | パスワード強度、2FA強制などの詳細設定 | 限定的なポリシー設定 |
監査ログ | 詳細な監査記録と活動ログ | 基本的なログのみ |
ユーザープロビジョニング | SCIM、Azure AD、Okta連携 | Google Workspace連携のみ |
緊急アクセス | 管理者復旧機能、アカウント回復ポリシー | 限定的な回復オプション |
1Password Businessの強み
- 専用の管理コンソールで組織全体のパスワード管理を一元化
- 部門・チーム・役割ごとのきめ細かいアクセス権限設定
- 詳細な監査ログによるコンプライアンス対応
- ユーザーのオンボーディング・オフボーディングの簡素化
Googleパスワードマネージャーの制約
- 企業向けの管理機能が限定的
- Google Workspace管理者でも詳細なパスワード管理ポリシーの設定が困難
- チーム単位でのアクセス権管理が複雑
管理機能の観点では、1Password Businessは企業のニーズに合わせた包括的な管理ツールを提供しています。特に複数の部署や事業部を持つ組織では、細かいアクセス権限設定や監査機能が重要になるため、その差は顕著です。
利便性を比較
従業員にとっての使いやすさは、パスワード管理ツールの導入成功において非常に重要です。使いにくいと感じられるツールは採用されず、結果としてセキュリティー対策が徹底されないためです。
利便性 | 1Password Business | Googleパスワードマネージャー |
対応プラットフォーム | Windows、Mac、iOS、Android、Linux | Chrome、Android、iOS(ただしiOSはChromeアプリ内) |
ブラウザー拡張 | Chrome、Firefox、Safari、Edge、Brave | Chrome中心(他ブラウザーは限定機能) |
オフライン利用 | 可能 | 限定的 |
パスワード自動入力 | あらゆるアプリとウェブサイト | 主にウェブサイト(Androidアプリ対応はあり) |
データ種類 | パスワード、クレジットカード、セキュアノート、ソフトウェアライセンス、文書等 | 主にパスワードと支払い情報 |
インポート/エクスポート | 多様なフォーマットに対応 | 限定的(CSVのみ) |
検索機能 | 高度な検索フィルター | 基本的な検索のみ |
1Password Businessの強み
- 幅広いプラットフォームとブラウザーに対応
- ウェブアプリ、デスクトップアプリ、モバイルアプリの連携
- 多種多様なデータタイプの保存に対応
- 高度な検索・フィルター機能
Googleパスワードマネージャーの強み
- Chromeユーザーにとっては追加インストール不要ですぐに利用可能
- Googleエコシステムとの統合
- シンプルな操作性
利便性の観点では、Googleパスワードマネージャーは特にGoogle製品を中心に利用する企業には手軽に導入できる利点がありますが、1Password Businessはより多様なプラットフォームとアプリケーションに対応しており、さまざまな業務環境に適応できる柔軟性を持っています。
料金を比較
コスト面も重要な検討ポイントです。両サービスの料金体系を比較してみましょう。
料金プラン | 1Password Business | Googleパスワードマネージャー |
基本料金 | $7.99/ユーザー/月(年払い) | 無料(基本機能) |
最低ユーザー数 | 制限なし | 制限なし |
無料トライアル | 30日間 | – |
容量制限 | 無制限 | Googleアカウントの容量内 |
ファミリープラン提供 | あり(従業員の家族向け無料プラン) | なし(個人向け無料) |
追加コスト | なし(全ての機能を含む) | Google Workspaceの契約が必要(800円〜/ユーザー/月) |
1Password Businessの費用対効果
- 専用のビジネス機能と企業向けサポートが含まれる
- 従業員の家族も利用可能な無料アカウントを提供(家族のセキュリティー向上も企業のリスク低減につながる)
- スケーラブルな料金体系(大規模導入時の交渉も可能)
Googleパスワードマネージャーの費用対効果
- 基本機能は無料で利用可能
- 既にGoogle Workspaceを導入している企業は追加コストなしで利用可能
- 高度な企業機能は限定的
料金面では、Googleパスワードマネージャー自体は無料ですが、企業利用においては基本的な機能しか提供されていません。1Password Businessは有料ですが、企業向けの包括的な機能セットとサポートを考慮すると、セキュリティーリスクの軽減とパスワード管理の効率化によるROI(投資対効果)は十分に期待できます。
サポート体制を比較
企業向けツールを選ぶ際には、サポート体制も重要な検討要素です。
サポート | 1Password Business | Googleパスワードマネージャー |
専任サポート | 専用のビジネスサポートチーム | 一般的なGoogleサポート |
サポート時間 | 24時間365日 | 標準的なサポート時間(Google Workspaceの契約による) |
対応言語 | 多言語対応(日本語サポートあり) | 多言語対応 |
導入サポート | 専門チームによる導入支援 | セルフサービス中心 |
トレーニング | 管理者・ユーザー向けウェビナー、研修資料 | ドキュメント中心 |
コミュニティー | 活発なフォーラムとコミュニティー | Googleコミュニティー内の限定的なセクション |
カスタマーサクセス | 企業規模に応じたカスタマーサクセスマネージャー | 大規模企業向けのみ限定的に提供 |
1Password Businessの強み
- 企業向けの専門サポートチーム
- 導入からトレーニングまでの一貫したサポート
- 日本語を含む多言語対応
Googleパスワードマネージャーの制約
- パスワードマネージャー専用のサポートが限定的
- 導入サポートが少ない(セルフサービス中心)
サポート体制においては、1Password Businessは企業向けに特化したサポートを提供しているため、導入から運用までの各段階で手厚いサポートを受けられる点が強みです。
1Password Businessが企業に選ばれている理由
多くの企業が1Password Businessを選択している理由を、より詳しく見ていきましょう。
より高いセキュリティーレベル
1Password Businessはエンタープライズグレードのセキュリティーを提供し、厳格なデータ保護基準を持つ企業にも対応しています。
1. 強力な暗号化とゼロ知識アーキテクチャー
1Passwordはゼロ知識アーキテクチャーを採用しており、ユーザーのマスターパスワードとSecret Keyがなければデータを復号することができません。これは1Passwordのサーバーが侵害されたとしても、攻撃者がユーザーデータにアクセスできないことを意味します。
具体的には:
- 256ビットAES暗号化(軍事レベル)
- TLS/SSL通信による保護
- PBKDF2を使用した総当たり攻撃への耐性
2. 多層防御アプローチ
1Password Businessは多層防御アプローチを採用しています。
- マスターパスワード(知っているもの)
- Secret Key(持っているもの)
- 2要素認証(追加の検証)
この3層のセキュリティーにより、単一の脆弱性が全てのセキュリティーを破ることはできません。
3. 高度なセキュリティー監視
Watchtower機能は、保存されたパスワードを継続的に監視し、以下の問題を自動検出します。
- データ漏洩サイトで露出したパスワード
- 脆弱なパスワード
- 再利用パスワード
- 2要素認証が未設定のサービス
- TLSセキュリティー証明書の問題があるウェブサイト
これにより、セキュリティーリスクを事前に特定し、対処することができます。
きめ細かい管理機能
1Password Businessは、企業規模のパスワード管理に必要な包括的な管理ツールを提供します。
1. 詳細なアクセス制御
組織内の役割や職責に基づいて、きめ細かいアクセス権を設定できます。
- Vaultレベルのアクセス権(閲覧のみ/編集可能)
- グループベースのアクセス管理
- カスタム権限設定
例えば、財務部門のみが財務システムのパスワードにアクセスでき、IT部門のみがインフラ管理パスワードにアクセスできるように設定が可能です。
2. 包括的な監査とレポート
セキュリティーコンプライアンスに必要な詳細な監査機能を提供します。
- ユーザーアクティビティーログ
- パスワードの変更履歴
- アクセス試行の記録
- セキュリティーレポート
これにより、セキュリティーインシデント発生時の調査や、コンプライアンス報告書の作成が容易になります。
3. 自動化されたユーザー管理
従業員のライフサイクル管理を効率化します。
- SCIM/JITプロビジョニングによる自動ユーザー追加
- SSOとの統合によるシームレスなログイン体験
- 退職者のアクセス権即時削除
- 復旧機能と緊急アクセスポリシー
これにより、従業員の入社・異動・退職に伴うアクセス権管理の負担が大幅に軽減されます。
ビジネスに特化した機能
1Password Businessは、企業特有のニーズに対応する機能を多数提供しています。
1. チームコラボレーション機能
企業内の情報共有を安全に行うための機能
- 共有Vault(保管庫)によるチーム間の安全な情報共有
- ドキュメント保存(最大1GBまで)
- セキュアノート機能
- アクセス権リクエスト機能
例えば、プロジェクトチームがAPIキーやライセンス情報を安全に共有できます。
2. サードパーティー統合
ビジネスの既存ワークフローとの統合
- Slack連携(安全なパスワード共有と通知)
- Microsoft Teams連携
- Okta、Azure AD、OneLoginなどのIDプロバイダーとの連携
- カスタムイントラネットとの連携のためのAPI
これにより、従業員の既存の業務フローに1Passwordを自然に組み込むことができます。
3. コンプライアンス対応
規制の厳しい業界にも対応
- SOC2 Type 2認証
- GDPR準拠
- HIPAA準拠(医療業界)
- PCI DSS準拠(決済業界)
- カスタムセキュリティーポリシーの適用
これにより、業界規制やセキュリティー規格に対応した運用が可能になります。
まとめ:安全な企業運営のために最適な選択を
パスワード管理ツールの選択は、企業のセキュリティー体制全体に影響を与える重要な決断です。ここまでの比較を踏まえ、最終的な意思決定のポイントを整理してみましょう。
比較のポイントまとめ
Googleパスワードマネージャーが適している企業
- Google Workspaceを主要業務基盤として利用している
- 予算が限られており、無料のソリューションを求めている
- 小規模チームで基本的なパスワード管理機能のみを必要としている
- 主にChromeブラウザーとAndroidデバイスを利用している
1Password Businessが適している企業
- 複数の部門・事業部を持ち、きめ細かいアクセス権管理が必要
- セキュリティーポリシーを厳格に適用する必要がある
- コンプライアンス要件が厳しい業界(金融、医療、公共機関など)
- パスワード以外の機密情報(文書、ライセンスキーなど)も安全に管理したい
- セキュリティーインシデントのリスクを最小化したい中・大規模企業
個人ユーザー向けの機能を企業向けに拡張したGoogleパスワードマネージャーに対し、1Password Businessは企業のセキュリティーガバナンスとしての役割を担うよう設計されている点が、最大の違いです。
1Password Businessを推奨する理由
特に以下のような企業には、1Password Businessがおすすめです。
1. セキュリティーを優先する企業
データ漏洩の平均コストは1件あたり7億円超(488万ドル、IBM調査による)と言われており、パスワード関連の脆弱性は最も一般的な侵入経路の一つです。1Password Businessの強力なセキュリティー機能は、このリスクを大幅に低減します。
2. 多様な業務環境を持つ企業
複数のデバイス、OS、ブラウザーを使用する企業環境では、1Password Businessのクロスプラットフォーム対応が大きな利点となります。
3. コンプライアンス対応が必要な企業
GDPR、HIPAA、PCI DSSなどのコンプライアンス要件がある企業では、1Password Businessの詳細な監査機能と管理ツールが規制対応を支援します。
4. 従業員のセキュリティー意識向上に取り組む企業
1Password Businessでは、従業員向けに家族アカウントを無料で提供。また、セキュリティートレーニング機能により、企業全体でセキュリティー文化の醸成に貢献します。
1Password Businessで実現できること
1Password Businessを導入することで、企業は以下のような成果を期待できます。
1. セキュリティーリスクの大幅削減
- パスワードの使い回しを防止
- 強力なパスワードの自動生成と管理
- 漏洩したパスワードの早期検出と対応
- フィッシング攻撃耐性の向上
2. 業務効率の向上
- ログイン作業の自動化による時間節約
- パスワードリセット作業の減少
- セキュアな情報共有の効率化
- 新入社員のオンボーディングの簡素化
3. セキュリティーガバナンスの確立
- 企業全体のパスワードポリシーの一元管理
- 詳細な監査ログによるコンプライアンス対応
- 退職者のアクセス権管理の自動化
- セキュリティーインシデント対応の効率化
4. セキュリティー文化の醸成
- 従業員のセキュリティー意識向上
- パスワード管理のベストプラクティスの普及
- セキュリティー対策の「見える化」
パスワード管理アプリの選択は、単なるツール導入ではなく、企業のセキュリティー戦略全体の一部として捉えることが重要です。1Password Businessは、現代の企業が直面するセキュリティー課題に対応するための包括的なソリューションとして、多くの企業から支持されています。
まずは1Passwordの30日間の無料トライアルから始めて、貴社のセキュリティーポリシーや業務フローにどのように貢献できるかを確認してみてはいかがでしょうか。セキュリティー対策は「あとで」ではなく「今すぐ」取り組むべき重要課題です。